[129]K'SARS
1番星に願い事をすると願いが叶うと言われている。 さて今回は、誰がお願いをするのかな?
ごろごろ。 「……」 ごろごろごろ。 「………」 ごろごろごろごろ。 「…………」 ごろごろごろごろごろ。 「もう、いいかな?」 「だめぇ〜。まだこうしているの〜」 「はあ、はいはい」 「えへへ、ご主人ちゃま〜」 今日はアカネの誕生日。 手はず通り、みんながパーティの準備をして、僕がアカネを連れ出して、あとでこっそりプレゼントを渡す…ってことになっていたんだけど、不思議なことが起こった。 それがまあ、この前のセリフなんだけど…。 結論から言うと、アカネが小さくなった。 年齢的にルルと同い年で、朝起きたらいきなり布団に潜り込んでいて、さっきから僕に甘えている。 食事中もずっとそうしているものだから、みんなの視線が痛い痛い。 これがアカネが大きくて、誕生日じゃなかったら、僕は何度昇天するかわかったものじゃない。 ミカなんて、明らかに殺気を発していたからな。 「にしても、どうしてこうなったんでしょうね?」 「そうですわね」 家の中で結構冷静な2人、アユミとランが僕の部屋で事態の状況を把握しようとしている。 いや、冷静なのはアユミだけで、ランはかなり顔が引きずっている。 「昨日までは、いたって普通でしたのにね」 「ご主人様は、何かお気づきになったことは、ありませんでしたか?」 「ないな。朝起きたら、アカネがこの状態でいたから」 ごろごろ。 僕がアカネの頭を撫でると、余計体を密着させてくる。 なんか、キツネのころを思い出すな。 あのときも、頭を撫でながら、茜色の空を見ていたっけ。 そういえば、ときどき僕に向ける笑顔が、誰かとかぶるんだよな。 う〜ん、誰だったろ? 「とにもかくにも、このまま家にいたんじゃ、ミカちゃんたちが落ちつかないので、ご主人様、アカネちゃんと一緒に散歩に出てはいかがでしょう?」 「そ、それがいいですね。ご主人様、あとのことはランたちに任せて、アカネちゃんとお出かけなさってください」 「まあ、元々その予定だからね。アカネ、僕と一緒に出かける?」 「うん!」 ということで、ミカやツバサの妨害を受けながらも、なんとか僕たちは外に出る事ができた。 にしても…。 「ご主人ちゃま、おんぶおんぶ!」 家を出た途端、アカネがおんぶを要求してきた。 最初はやんわりと断ろうかと思ったけど、この年の子の期待に満ちた視線&今にも泣きそうな顔には、どんな大人でも勝てない魔力を持っているため、仕方なく背負っている。 ルルにも、こんなことしたことないのにな。 「ねえ、ご主人ちゃま」 「なんだい?」 「あたち、あっちに行きたい」 アカネが指を差した先は、この街で1番見晴らしが良い公園がある。 休日になると、よくちびっこトリオとアユミを連れて行ったっけ。 「じゃあ、行こうか」 「わ〜い」 満面の笑みで答えるアカネを背に、僕は公園へと歩いていった。 「結構いっぱいだね」 公園についたら、そこには家族連れの人たちでたくさんだった。 ちょうど、今のアカネと同じぐらいの子が多いみたいだ。 「…人間、いっぱい」 「? アカネ?」 不安な声を出したアカネを一旦下ろして、顔を覗く。 「どうしたんだい?」 「あたち、ご主人ちゃま以外の人間、苦手」 「…そっか」 僕は何も言わないでアカネの手を握って、少し離れたところに連れて行く。 そこは、まだみんなが来る前に見つけた、とっておきの場所。 「うわ〜」 それを見たアカネは、僕にしがみついて全身で喜びを表現する。 「ここなら、あまり人が来ないからね」 「うん! ありがとう、ご主人ちゃま」 『ありがとう、お兄さん』 このときのアカネの笑顔が、冴子ちゃんとかぶった。 アカネを僕が引き取ったときも、同じような笑顔で言ったことを思い出した。 そっか、さっきから引っかかっていたのは、冴子ちゃんだったのか。 「? どうしたの?」 「あっ、ううん。なんでもないよ。それより、何して遊ぼうか」 「えっとね、ごろごろしたいの〜」 「えっ? また…」 「ぐすん、だめなの?」 うっ。 アカネ、今の姿で(前の姿でも)それは、反則だぞ。 ああ、やめてくれ。 勢いで抱き締めてしまうじゃないか。 「わ、わかったよ。アカネの気が済むまで、甘えていて良いから」 「わ〜い」 僕が先にベンチに座って、それからアカネが膝の上に乗って、頬をすりすりしてきた。 かわいいんだけど、ここまでされると逆に辛いものがあるよ。 「ねえ、ご主人ちゃま」 「うん?」 「さっきみたいに、なでなでもして〜」 「はいはい」 もう1度さっきの顔されるのは勘弁してほしいので、ここは大人しく頭を撫でた。 それにしても、どうしてアカネは小さくなったのかな? 昨日までは何も変わらなかったのにな。 まあ、僕がここで考えても仕方ない事だけど。 「…ご主人ちゃま」 アカネが頬すりをやめて、僕の顔を見る。 「どうした?」 「…あたちね、お星様にお願いしたんだよ」 「お願い事?」 「うん。もっと、あたちがご主人ちゃまに素直になれますようにって。そうしたらね、こんな姿になっちゃったんだよ。きっと、メガミ様が、こんなにしてくれたんだよ」 「…そうかもね」 真実はユキさんに聞いてみないとわからないけど、今のアカネにそんなことをいうと、とんでもないことが起きそうなので、自分の中にしまいこむ。 でも、アカネがそんなことを願い事をしたなんてな。 ちょっと意外かも。 「あたちね、もっとご主人ちゃまとの時間を作りたいの。だって、あたちとご主人ちゃまは、運命っていう赤い糸で結ばれているんだから」 「アカネ…」 「…うわ〜、綺麗な夕焼け〜」 アカネが指差した先には、大きな夕焼けがあった。 そっか、もうそんな時間なんだ。 秋は冬ほどじゃないにしろ、やっぱり陽が落ちるが早いな。 そういえば、アカネの名前の由来はこの色だったな。 あはは、アカネ、食い入るように見ている。 …渡すなら今か。 僕はポケットから、アカネ用のプレゼントを出す。 「アカネ」 「な〜にぃ?」 こっちを向いたアカネに、僕はゆっくりとプレゼントをつけてやる。 「…ペンダント?」 「うん。何にしようか迷ったんだけどね、やっぱり、無難にこれかなって」 「…ありがとう、ご主人ちゃま。あたち、嬉しいよ」 「そっか」 「でも、あたちが1番嬉しいのは…」 ちゅ。 ふいに、アカネの唇が重なる。 前にしてあげたキスとは違い、かなり長い。 「…ぷは。えへへ、あたちには、これが1番のプレゼントだよ」 「じゃあ、お返し」 ちゅ。 今度は、僕がアカネにさっきよりも短めのキスをする。 「…誕生日、おめでとう。アカネ」 「ありがとう、ご主人ちゃま」 それから僕たちは、落ちて行く夕日を見ながら、帰るまでの時間を過ごした。 翌日。 「な、なんで、わたしがご主人様のところで寝ているの!?」 僕の部屋で寝ていたアカネが、顔を真っ赤にして慌てていた。 どうやら、昨日のことは覚えていないらしく、プレゼントだけが残る形になった。 そのことが災いしたのか、ミカたちが昨日のことを暴露したために、アカネはしばらく僕のことを避けるようになった。 ただの照れ隠しとアユミは言っていたけど、やっぱり寂しいよな。 まあ、数日後には普通に喋れるようになったけどね。 来年は、今度は大きなアカネと迎えたいな。 僕の1番大切な、アカネと。
1番星に願い事をすると願いが叶うと言われている。 次回は、誰がお願いをするのかな?
<終>
後書き♪
今回は余裕で終わったな。 「ねえ、ご主人様。どうして、アカネさんは小さくなったんですか?」 おっ、ヒカリじゃん。 「私もやっとこっちに来るようになりましたよ」 どうしてって言われてもな。 俺は毒電波の受信を元に書いているだけであって、どうしてと言われるとかなり困るんだよな。 強いてあげるなら、これかな。 「うっ、それは…」 この力を借りれば、どんなネタもやりたい放題だな。 「…あとで、滅殺されても知りませんよ」 ぢゃむじゃないから良いのだ。 「ところで、これはBSS専用になったんですよね?」 まあ、そうだな。 「過ぎてしまった分は、どうするんですか?」 …書くしかなかろうに。 「それと、既に書いてしまったのは?」 もう1度、BSSを書くよ。 どう考えたって、あれはBSSじゃないからな。 「うわ、いっぱいありますね。今やっているのと、新連載も含めると」 がんばるっすよ。 天よ、俺に毒電波を!! 「ええ〜、只今ご主人様は受信中なので、私が締めさせてもらいますね。では、また次回作でお会いしましょう〜」 おらおらおら〜!!
最後に、アカネさん、 「お誕生日」 「「おめでとー(ございます)!!」」
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2003年10月07日 (火) 12時20分
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